頭脳警察

(サブブログ「ミルクたっぷりの酒・音楽版」に公開したものを転載)

頭脳警察

頭脳警察 1(ファースト)

頭脳警察 1(ファースト)

頭脳警察1(紙ジャケット仕様)

頭脳警察1(紙ジャケット仕様)

<曲目>
1 イントロダクション〜世界革命戦争宣言
2 赤軍兵士の詩
3 銃をとれ(Part1)
4 さようなら世界夫人よ
5 暗闇の人生
6 彼女は革命家
7 戦争しか知らない子供たち
8 お前が望むなら
9 言い訳なんか要らねえよ
10 銃をとれ(Prt2)


楽曲的にはA面(CD:T1-T5)が充実している。B面(CD:T6-T10)は曲がやや単調に感じる。
赤軍兵士の詩」と「さようなら世界夫人よ」が秀逸。
「さようなら世界夫人よ」は、2ndアルバムのスタジオ録音版よりも、こちらのギターとパーカッションのシンプルな演奏の方が気に入っている。
ちなみに、自分はパンタや頭脳警察の音楽が好きで、ラディカルで政治的なパブリックイメージには特に関心がないので、「世界革命戦争宣言」にはこれといった思い入れはない。


頭脳警察

頭脳警察セカンド

頭脳警察セカンド

頭脳警察セカンド(紙ジャケット仕様)

頭脳警察セカンド(紙ジャケット仕様)

<曲目>
1 銃をとれ!〜マラブンタ・バレー
2 さようなら世界夫人よ
3 コミック雑誌なんか要らない
4 それでも私は
5 軍靴の響き
6 いとこの結婚式
7 暗闇の人生
8 ふりかえってみたら
9 お前と別れたい


A面(CD:T1-T4)に初期の代表作が多い。
A面の曲も好きだが、終盤の3曲「暗闇の人生」「ふりかえってみたら」「お前と別れたい」にパンタのミュージシャンとしての才能を感じる。
バラエティに富んだ曲想、アレンジの妙。パンタのファンは、歌詞やメッセージ性が好きな人が多いから、作曲家としてのパンタはあまり評価されることがないのが残念。
「マラブンタ・バレー」の曲・アレンジもけっこう好き。


頭脳警察

頭脳警察3

頭脳警察3

頭脳警察3(紙ジャケット仕様)

頭脳警察3(紙ジャケット仕様)

<曲目>
1 ふざけるんじゃねぇよ
2 嵐が待っている
3 時々吠えることがある
4 滅び得たものの伝説
5 少年は南へ
6 前衛劇団”モーター・プール”
7 歴史から飛び出せ
8 無知な奴らが舞い踊る
9 桃源境
10 指名手配された犯人は殺人許可証を持っていた
11 パラシュート革命
12 光り輝く少女よ


80年代、頭脳警察のことを「早すぎたパンク」とか「パンクロックの先駆け」と表現した雑誌が多かった。
1stアルバムは、ティラノザウルス・レックスを意識していたそうだし、2ndアルバムのサウンドはパンクというよりはハードロックだろう(パンタのスカスカのギターがパンク的だといった批判は目にしたことがあったような気もするが)。
3rdアルバム収録の「ふざけるんじゃねえよ」は、歌詞も曲もサウンドもパンクそのもので、この曲を指して「早すぎたパンク」「パンクロックの先駆け」と言ったのならよく理解できる。
アルバム全体は、パンクの一言では語り尽くせない多彩な内容になっている。
2ndアルバムとも共通したヘビーなサウンド「嵐が待っている」、ストレートなロックナンバー「歴史から飛び出せ」、変則的な構成のロック曲「前衛劇団モータープール」「パラシュート革命」、不気味さを感じさせるアートっぽい曲「滅び得た者の伝説」「無知な奴らが舞い踊る」「桃源境」、パーカッションが小気味いい「少年は南へ」、パンタの詩人としての側面がよくでている「時々吠えることがある」、美しいバラード「光輝く少女よ」等。
インパクトは2ndアルバムよりも落ちている気もするが、個々の楽曲は充実している。


誕生

誕生(紙ジャケット仕様)

誕生(紙ジャケット仕様)

<曲目>
1 無冠の帝王
2 悲しみにつつまれて
3 詩人の末路
4 あなた方の心の中に黒く色どられていない処があったらすぐ電話をして下さい
5 もうあきた
6 鹿鳴館のセレナーデ
7 やけっぱちのルンバ
8 メカニカル・ドールの悲劇
9 心の落ちつき失せて
10 破滅への招待


70年代に発表された頭脳警察のアルバムの中ではもっとも地味な作品。小品集のような趣き。
パンタの作曲者、ミュージシャンとしての才能は感じさせる。
3rdアルバムの「時々吠えることがある」にも通じる文芸的な作品「悲しみにつつまれて」「心の落ちつき失せて」。
「前衛劇団モータープール」と同路線の「あなた方の心の中に黒く色どられていない処があったらすぐ電話して下さい」。
お遊び的な要素のつよい「やけっぱちのルンバ」「メカニカルドールの悲劇」(この路線は次作に収録された「プリマドンナ」に継承された)。
クラシックをとりいれた「鹿鳴館のセレナーデ」。ジャンル分けが難しい「無冠の帝王」。
楽曲はバラエティにとんでいるから、短編集を読むようなかんじで聴くのがいいかもしれない。
「詩人の末路」は文芸色のつよい作品の中では一番の傑作だと思う。
「もうあきた」は地味ではあるが、ポップな名曲。
ディキシーランドジャズ風の「破滅への招待」も曲・アレンジともよくできた傑作。
個人的には「詩人の末路」「もうあきた」「破滅への招待」がこのアルバム中のベスト。


仮面劇のヒーローを告訴しろ

[rakuten:hmvjapan:10295580:detail]
<曲目>
1 ウイスキー・ハイウエイ
2 まるでランボー
3 ハイエナ
4 恋のいらだち
5 ホ短調の間奏曲
6 仮面劇のヒーローを告訴しろ
7 イエス・マン
8 奴は帰らない
9 麗しのジェット・ダンサー
10 愛なき日々
11 プリマドンナ
12 間違いだらけの歌


70年代に発表された頭脳警察のアルバムは、『セカンド』から『悪たれ小僧』までみな好きなのだが(『ファースト』はB面に不満があるので、今ひとつの出来で好きと言いきれない)、完成度という点では『セカンド』『仮面劇のヒーローを告訴しろ』『悪たれ小僧』の3枚が甲乙つけがたい出来で傑作だと思う。
そして一番好きなアルバムが、この『仮面劇のヒーローを告訴しろ』である。
頭脳警察のファンは、『ファースト』『セカンド』が好きなファンが多いらしく、それらのファンの中には『仮面劇のヒーローを告訴しろ』はポップすぎるとして、あまり評判がよくない気もする。
自分の場合、1981年に発表された『KISS』も、アルバムの出来自体は悪くなく、けっこう好きなので、ポップであるということはマイナス評価にはならない。
パンタ自身、ハードロッカーとしてのヘビーさと、作曲家としてのポップ・センス、2つのちがった魅力をもっていて、自分は両方とも気にいっている。
『仮面劇のヒーローを告訴しろ』も、ロック・スピリットとポップなセンスを両方感じるので、むしろポップである点は高評価の要因となっている。


『サード』の頃の頭脳警察がパンクロックだとすると、このアルバムでの頭脳警察は、パンクムーブメントの後に出てきた、ポリス、ニューウェイヴといった印象もする。
ポリスのシンプルだが高度な音楽性とも共通性があるし、ストリングスをとりいれたアレンジは、のちのニューウェイヴっぽさも感じさせる。
頭脳警察を、のちに出てきたパンクやニューウェイヴと比較すること自体適切ではないかもしれないが。)


シンプルでタイトな演奏、アレンジのセンスの良さが気にいっている。
ギター、ベース、ドラムとも腕利きのスタジオミュージシャンらしいので、それまでのアルバムよりは音楽的な魅力が増えていると感じる。


このアルバムを最初に聴いたのは1979年、高校1年の時だったが、一番最初に聴いたロック(っぽいロック)アルバムだったので、余計に思い入れがつよいともいえる。(それ以前に憂歌団喜納昌吉は聴いていたが、これらはロックっぽいロックとは言えないため。)


私的名盤選 FILE No.012 頭脳警察「仮面劇のヒーローを告訴しろ」


頭脳警察/まるでランボー,ブリジット・フォンテーヌ/ランボーのように


悪たれ小僧

悪たれ小僧(紙ジャケット仕様)

悪たれ小僧(紙ジャケット仕様)

<曲目>
1 戦慄のプレリュード
2 夜明けまで離さない
3 ひと粒の種になって(A Little Bit of me)
4 悪たれ小僧
5 真夜中のマリア(転換の為のテーマ)
6 落ち葉のささやき
7 サラブ・レッド
8 スホーイの後に
9 あばよ東京


前作のシンプルでタイトなロック作品から一転、重厚壮大なハードロック作品となった。
ハードでヘビーな「戦慄のプレリュード」「悪たれ小僧」「サラブレッド」。
ロック・インストゥルメンタル「真夜中のマリア」。
フォーク色のつよい「ひとつぶの種になって」「落葉のささやき」。
ハードなバラードナンバー「夜明けまで離さない」。
アコースティックギターを全面に押し出しているが(精神的に)ハードなロックとなっている「スホーイの後に」。
このアルバムだけでなく、結果的に頭脳警察を締めくくる曲となった「あばよ東京」。
楽曲も充実しているし、曲調もバラエティに富み、アルバムとしてのバランスも良い。
完成度も高いし、好きなアルバムである。


頭脳警察のファンになったのは高校生の時(1979年)だったが、この時期の頭脳警察のメンバーのことは、中学時代、友川かずきのアルバムを買って知った。
友川の1st,2ndアルバムに、パンタを除くメンバーがミュージシャンとして参加しているが、友川の1stアルバム『やっと1枚目』のライナーノートに、パンタを含む頭脳警察メンバーの座談会が掲載されている。パンタ、勝呂和夫、石井まさお、石塚俊明の4人。
勝呂と石塚(トシ)は友川の音楽を高く評価しているが、石井はそれほど評価していないのが面白い(石井は、友川のライヴアルバムにもピップ・エレキ・バンドの一員として参加していたはず)。
このライナーノートは、友川ファンだけではなく、頭脳警察ファンにとっても貴重な資料かもしれない。


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